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カルボの臨床試験の説明 トリプルネガティブ乳がん

カルボの臨床試験について

2020年9月27日

この試験について、jRCT(国の臨床試験の登録サイト)で検索可能ですが、ここから内容を見ることが出来ます。

✔︎ トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は若い女性に多い乳癌です。抗がん剤治療が効きにくい場合には、治りにくい人が多くなります。TNBCでカルボプラチンの効果がある人がいることが分かっています。しかし、術後に用いて治る人が増えるかどうかのデータがありません。今回の試験はどのような人にカルボプラチンを使うと再発が減るのかを確かめる試験です。

✔︎ 認定倫理委員会で承認を受け、すでに3施設で5例登録され、大学病院14を含む26施設で開始準備が進んでいます。

✔︎ カルボプラチンはジェネリック医薬品で、新薬の30分の1程度です。製薬メーカーの利益が少なく、臨床試験に出資する余裕がありません。治験には数億円かかりますが、今回は医師主導の臨床研究で、薬剤はメーカーから無償で提供して頂きました。その他の経費として2〜3000万円程度を見込んでいます。この資金の一部をクラウドファンディングでお願いしたいと思います。

✔︎私の行った試算では、毎年6000人がカルボプラチン治療を受けて1000人の再発を防げると考えています。

私のこれまで

乳がん治療に関わるようになったのは、和歌山医大紀北分院に勤務したときのことがきっかけです。がんという病気は遺伝子の異常が原因のため60歳以上で増加します。しかし、乳がんは40歳から増加します。1989年、紀北分院で40代の患者さんが乳がんで亡くなるのを見たときに衝撃を受けました。教授にマウスを用いた研究を勧められ、その後、慶應大学に留学してがんの創薬研究を行いました。慶應大学から和歌山に帰ったときに父の肺がんが発見されました。すでに手術不能で、当時は肺がんの薬剤がほとんどなかくて悔しかったのを覚えています。がんは手術で治る人が多いので、外科医として手術を行う意義を感じますが、それだけでは防ぎきれません。がんが治る病気になって欲しいと思い、創薬の研究を続けています。

トリプルネガティブ乳がんと私、そして臨床試験

乳がんの中でも特に、トリプルネガティブ乳がんは、30代、40代と若い人に発生しやすいがんです。抗がん剤の効きやすい人は良く治る半面、効かない人は亡くなる率が高いです。手術や通常の抗がん剤で治せない若い乳がん患者さんを救うために、神戸大学を中心にカルボプラチンの臨床試験を始めました。

2013年に北里大学病院に和歌山の市民病院から赴任しましたが、その市民病院にいるときから計画していました。構想から約10年になりますでしょうか。北里大学にいた4年間も模索し続けていましたが、運営資金と薬剤費、検査費用などで5〜6000万円程度かかる資金問題で開始する勇気がありませんでした。

北里大学に赴任する直前に治療に関わった患者さんが、トリプルネガティブ乳がんでブログを始めていました。ブログの友達が、どうして再発して亡くなるのか、亡くなる人を減らしたいと言ってきました。臨床試験をして治療法を開発するしかないと返事しました。それなら、治る人を増やしたいからトリプルネガティブ乳がんの患者会を始めると言い出しました。ふくろうの会が始まり、その時から勉強会をやったり、おしゃべり会に一緒に参加したりして、活動について話し合っています。(ふくろうの会のサイト

2017年に神戸大学に赴任しました。いつまで考えていても何も変わらない、今まで何も出来ていない自分に対するふがいなさも手伝っていると思います。個人的に借金を背負ってでも、やらないといけないことはやらないといけない、やり通そうと決意しました。2018年4月の臨床研究法に間に合わせるために2017年から試験の計画を立てはじめました。臨床試験は参加はしたことがあるものの、計画書を書く知識もないまま臨床研究推進センターの方の手伝いを受けながら1人で研究計画を書きました。やり通すと腹をくくると、支援を申し出てくれる方々が増えてきました。私の講演会の後で募金箱にお金を頂いたり、チャリティーコンサートを企画して頂いたり、ライオンズクラブから寄附を頂いたりで、300万円程度集まりました。ふくろうの会は、9000名の署名を集め、製薬メーカーを何度も尋ねて努力して下さいました。18年の春、「やっぱりもうあかん!」と言っていたふくろうの会の代表に、「患者の言葉が一番強いから、もう一回言ってこい!」等とけしかけて申し訳なかったですが、日医工から薬剤の無償提供を頂いてきたのには、正直びっくりしました。データセンターの新潟大学の統計学の先生も通常の数分の1程度のデータ管理費で引き受けて頂けることになりました。300万円の寄附と薬剤提供で、これなら借金を背負わずに臨床試験がやれるようになるかもと思いました。それが、2019年の年明けです。

知り合いの先生方への呼びかけで、20施設の先生から参加の要望が集まり、2019年3月には臨床研究法への移行措置も無事に終わりました。8月には薬剤も届いて、やっと始められるとは思ったのですが、新しい法律下での倫理委員会の煩雑さ、各病院で揃えなければならない書類と、その手続きを理解している人はほとんどありません。研究資金が限られているので、実費で治療をお願いしていますが、薬剤費を除いて1回1万円の実費に、化学療法加算などの加算をつけて、4万円、8万円でないと契約出来ないという病院も多いのが実情です。8万円と言われると更に4000万円かかります。一つ一つの病院と実費で契約することをコツコツ続け、やっと2/3の病院との契約が完了しました。腫瘍を用いた検査の費用も粘り強く交渉し、これまで一緒に研究してきたファルコバイオシステムズが共同研究という形で無償で検査をして頂けることになりました。2020年4月には、この検査を含めた臨床試験の最終形が固まり、やっと6月に症例登録が始まりました。参加施設も26と増え、登録は2020年9月25日現在5名です。

トリプルネガティブ乳がんの再発を抑えるカルボプラチンの効果を検証する臨床試験

これまで、HER2陽性乳がんでは用いられてきましたが、HER2陰性乳がん、特にトリプルネガティブ乳がんには用いられてきませんでした。再発乳癌の標準薬であるタキサン系薬剤の一つ、ドセタキセルの単剤とカルボプラチンの単剤の英国での比較試験の結果が2014年に発表されました。この結果、トリプルネガティブ乳がんの再発に対してカルボプラチンの効果がドセタキセルと同じだったことに驚きました。その後、ドイツの臨床試験では、術前化学療法にカルボプラチンを加えるときと、加えない時を比較すると、手術時にがんが消失している率が高く、術後の再発も低いことが確認されました。しかし、米国の試験では、がん消失率は上がったものの、再発を抑える効果は認められませんでした。このように、カルボプラチンでは、まだトリプルネガティブ乳がんの術後の再発を抑えられるのかどうかが明らかではなく、ガイドラインでもカルボプラチンの使用が支持されていません。

再発乳がんでこんなに効果が高いと分かっている薬剤が、再発を抑えるために使われないのは、誰に効くのかを証明する試験が足りないからです。今回の試験では、がんが消失するほど術前化学療法が効いた人は除いて、効果の低かった人を対象にカルボプラチンの効果を確かめます。また、BRCAnessテストを行って、どんな人に治療効果が高いのかを検証します。

臨床試験の方法

術前化学療法後に手術を受け乳がんが残っている患者さん270人を2群に分け、一つの群の方は通常の経過観察、もう一方の群の方はカルボプラチンの点滴治療を外来で3週間毎に4回受けます。再発した率を見ることで、陽性患者さんでカルボプラチン治療群の方が再発が少なくなるのではないかと考えています。

これまででの研究成果と今後の期待

北里大学の時の昭和大学、熊本大学との共同研究で、術前化学療法で消失せず、BRCAnessテスト陽性の方の再発率が非常に高いことが分かっています。遺伝子を修復するBRCAが異常(BRCAnessテスト陽性)であれば、カルボプラチンによる腫瘍内の遺伝子障害を修復出来ないため、腫瘍が死滅すると考えられます。トリプルネガティブ乳がん全体でもカルボプラチンの効果が確認出来ると思いますが、更にBRCAnessテスト陽性の患者さんではカルボプラチンの治療によって再発が少なくなり、BRCAnessテスト陰性の患者さんではカルボプラチンで治療してもしなくても再発が変わらないのではないかと考えています。

この臨床試験でカルボプラチンの有効性が示され、使えるようになればトリプルネガティブ乳がんで亡くなる方を毎年1000人救命出来ると考えています。この試験が終われば、また次の試験でカルボプラチンで再発を抑えられなかった人を救う治療法の開発を行う予定です。

新薬開発も進んでいますが、新薬で1000人救命すするのに薬剤費だけで数千億円かかると言われています。カルボプラチンであれば薬剤は1人8万円以下なので、5億円あれば毎年TNBCの1000人が救命出来ます。それも、新薬であればほぼ全てが保険から支払うことになりますが、3週毎に2万円であれば、個人で3割払うことが出来ます。国にも優しい治療と言えます。

資金について

これまでに300万円のご寄付を頂きました。100円から100万円まで色んな形で頂きました。チャリティコンサートもして頂きました。

今回は、READYFORにお願いしました。この臨床試験の資金調達が成功し、試験が完遂することを願っています。まだ分からないことですが、試算通り1000人の方が助かる治療が生まれることに期待しています。

2020/90/25 記載 9/27変更

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