トリプルネガティブ乳がんについて

乳がんとは

毎年約9万人に乳がんが発見され、1.5万人の方が乳がんで亡くなります。発生は女性で1位ですが、死亡は女性で5位です。通常のがんは60歳を超えてから年齢とともに多くなってきますが、乳がんは40歳を超えると多くなり、その後の頻度は増えません。30代後半から60代前半の病死の方の中で、原因は乳がんが最も多いです。だから、がんの中では死亡率が低く、それほど問題ではなさそうですが、40代50代の女性が再発したり、亡くなったりすると、仕事のみならず、育児や介護など家庭に与える影響は大きく、社会的に問題が大きいといえる病気です。

乳がんの治療法

治療法には大きく2種類があります。手術に薬物療法、放射線治療を加えて、治る確率を上げるために行う治療。もう一つは、切除範囲外にがんが広がり、手術ではなく、薬物療法や放射線治療で治療する場合。この場合、多くは治癒することがありません。乳がんで使う薬剤には、大まかには3種類あります。ホルモン治療薬、抗HER2薬、抗がん剤です。女性ホルモンがくっついてがん細胞が増える部位が女性ホルモン受容体(ER)。ERがあるかないか。増殖因子がくっついて細胞が増えるHER2と言う蛋白があるかないかで、治療薬を選択します。ERのある方ではホルモン治療がメインです。HER2が多い場合には、抗HER2薬を使います。その他には、髪の毛が抜けたり、白血球が下がったりするいわゆる抗がん剤があります。トリプルネガティブ乳がんは、ER、HER2がないので、抗がん剤だけを使います。

トリプルネガティブ乳がんとは

乳がん全体の10-15%です。通常の乳がんより若い人に多いのが特徴です。トリプルネガティブ乳がんは、前述の通り、ER、HER2がないものを言います。でも、トリプルは3ですよね。実はプロゲステロン受容体(PgR)というのもありません。ERがないと、基本的にはPgRができないので、今では、ER、HER2がないがんの人はトリプルネガティブ乳がんと考えて治療をしています。

トリプルネガティブ乳がんの治療

トリプルネガティブ乳がんは、ER陽性乳癌より、術前に抗がん剤が良く効いて、手術時にがんが消えている人の割合が多いです。がんが消失した人では、再発は少ないです。ERとHER2がないため、ホルモン治療や、抗HER2薬は効果がありません。標準的には、アントラサイクリンとタキサンという通常の抗がん剤を使います。それが標準療法で、現在最も効果的な治療法です。抗がん剤が効かない人の再発率は高く、3年以内に多いです。最も期待されるのは、術前か術後に抗がん剤治療をして、再発を減らすことです。しかし、アントラサイクリンとタキサン以外に、現在のところ、再発を減らせる薬剤がありません。

臨床試験について

神戸大学では、製薬メーカーとトリプルネガティブ乳がんの新薬開発のプロジェクトを行っています。しかし、今回の臨床試験のメインテーマは、再発を減らすために新しい治療法を開発することです。すでに20年以上も前から卵巣がんや肺がんに使われてきたカルボプラチンですが、カルボプラチンがトリプルネガティブ乳がんの再発時に有効なことは分かっていますが、術後に用いて再発を防ぐには世界的にデータが少なすぎます。そこで、今回、再発をどれだけ減らすことが出来るか検証する臨床試験を行います。

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